先日、一通の温かい手紙をいただいた。
それは、当園の能登栗をご購入くださったお客様からの、丁寧な、それでいて心のこもったお礼の言葉であった。
正直なところ、農家として、これらのことに対するこれ以上の喜びはない。本当に、そう思ってしまう。
我々、土にまみれて生きる人間にとって、結局のところ、良いものを作り、それを口にしてくれたお客様からいただく感謝の言葉に、最上の喜びを感じるものなのだ。私は、この手紙を何度も読み返すのである。
不安の向こう側で育つ、珠洲の能登栗
私の育てている栗は、この石川県珠洲市の奥能登の地で、手塩にかけている。
収穫量は、世間一般の栗と比べると少ない。あまり多くの人の手に届くものではないが、その限られたお客様の中から、こういった温かい手紙をいただくというのは、本当に嬉しいことなのである。
私は、出荷する前に必ず、自分で栗を剥いて食べてみる。その味を確認して、納得してから出荷している。
しかし、自然の産物である栗は、一つ一つが個体だ。すべての栗が、私が確認した最高の味と同じであるとは限らないのである。
だからこそ、出荷する時はいつも不安がいっぱいになる。本当に安心して美味しく食べてもらえただろうか、と。
そんな不安を抱える私に、こういった手紙が届く。そうすると、ああ、本当に栗を作っていて良かったと心から思う。
私が頑なに貫いている無農薬・無肥料という栽培。これは、非常に手間がかかる道である。
しかし、この手紙に書かれていた「美味しい」というお客様からの言葉は、私のこの覚悟と哲学が間違っていなかったことを、力強く証明してくれるのである。
感謝の手紙は、次なる挑戦の力
お客様からのこれらの感謝の気持ちこそが、私の次なる成長の原動力となる。それはもう、腹の底から湧き出る、非常に強い力なのである。
これからも私は、この奥能登の地で、無農薬・無肥料の哲学を守り抜き、本当に安心して美味しいと言ってもらえる和栗を作り続けていこうと思うのである。



