初夏の栗園で、虫コブを切っている
能登の初夏、栗の木々は瑞々しい緑を広げています。
その裏側で、私はクリタマバチの虫コブを切り取る作業に追われています。昨年仕込まれた卵が孵化し、芽を食い荒らそうとしているサインです。放置すれば成虫になり、来年の枝に卵を産み付けます。いわゆる「時限爆弾」だと思っています。
こういう害虫がいるのに、なぜ栗という種は消えないのか。
害虫が増えれば、天敵のチュウゴクオナガコバチも増えます。この増減の波が、壊滅的な絶滅を防いでいる。自然の均衡、と言えばそれだけだと思います。
でも、経営者の目で見ると、話は少し違って見えます。
「自然に任せる」は耳に心地よい。ただ、その実態は、農家にとっての負の連鎖でもあるように感じます。天敵が増えるのは、害虫が爆発して木が食い荒らされたあとです。天敵が害虫を抑えても、前年の収益の損失や、傷ついた樹勢が自然に埋め合わされることは、まずないでしょう。
自然が関心を持っているのは、種の存続だと思います。一軒の農家の黒字化までは、関心がないように見えます。本音を言えば、そこが農業の厳しいところだと思っています。
だから私は、手作業で虫コブを切っています。
クリタマバチが成虫になる前に、視認できる虫コブを一つひとつ、剪定ばさみで取り除きます。熟練の腕が要る作業ではないと思います。やるか、やらないか。それだけです。広大な果樹園でこれを続ける労力は、正直、気が遠くなります。それでも、ここを手抜きすると、自然の均衡に任せた結果を、そのまま帳簿で受け取ることになります。
私は慣行栽培の園を買い取り、無農薬で立て直しました。苗木からの近道は捨て、ボロボロの構造を直すところから入りました。困難は次々と出てくる。農薬の正攻法も選択肢としては知っていますが、その選択肢はありません。