犬と暮らす

愛知県の高級住宅街から、そいつは我が家へやってきた。

9歳になるジャーマン・シェパードのフィータだ。

元々いた家の方が引っ越しのため手放すという話を聞きつけ、私が引き取ることにした。8歳だったそいつを車に乗せて連れてきたのは、半年前のことだ。

これまで2頭のジャーマン・シェパードと、2頭のラブラドール、合わせて4頭の大型犬を飼ってきた経験がある私だが、さすがに8歳という高齢での引き取りは初めてだった。最初はやはり、戸惑いと緊張が入り混じった顔をしていたっけ。

だが、1か月も経てば、すっかり私のことが気に入ったようで、後をついて回るようになった。

こいつは私から一時も離れようとしない。トイレに行けばドアの前に座り、風呂に入れば脱衣所の前でじっと待っている。部屋のどこにいても、私の姿が見えなくなると、家具の裏から回り込んでまで、見える位置に移動してくる。

その姿を見ていると、なんだか可笑しくて、愛おしい気持ちになる。

年齢のせいか、運動能力はこれまで飼ってきた犬たちと比べると、正直劣る。だが、それはこの犬の能力が劣っているわけじゃない。これまでの犬たちが小さな頃から海や川で遊び回っていたのに対し、こいつは水が苦手だったようだ。

初めて海に連れて行った時、怖がってなかなか水辺に近づこうとしなかった。だが、私が無理矢理にでも抱えて海に入り、水が気持ちいいものだと認識させると、少しずつ自分から水に入るようになった。何事も経験なんだな、と改めて感じた。

私は農業をやっているので、よく山の中に入る。最近は全国的に熊の目撃情報が増えていて、一人で山に入るのは心細い。だが、こいつが一緒だと、不思議と心強い。

番犬としては少々頼りない部分もあるが、それでも異変を感じると耳を立てて唸り声をあげ、時には吠えかかる。その姿を見ていると逞しく思う。

8歳という高齢で我が家に来たこいつと、この縁を大切にしたい。最後まで後悔することなく、精一杯可愛がり、育てていきたいと思う。犬という存在は、家族の一員として、そして山で働く私にとって、最高の相棒だ。