栗農家の宿命

その日は青年会の集まりがあって、ちょっと早めに来て手伝ってくれって頼まれていた。「了解」と伝え、軽トラのエンジンをかけ山を降りようとしたら、なんか右の後ろのタイヤがヘニャっとしてる。

「ああ、パンクか……」

幸い、山に道具は置いてあったから、急いで取りに戻って、タイヤ交換だ。

汗だくになって、ジャッキを回して、ナットを緩めて。そうこうしてるうちに、時間はどんどん過ぎていく。もう、間に合わない。

友人に「遅れるわ」って連絡を入れたら、「手伝いに行こうか?」だって。ありがたいけど、道具もあるし、自分でなんとかできるからって、丁重にお断りした。

やっとこさタイヤ交換が終わって、山を降りて、一度家に帰って着替えてから集会所へ。もう会は始まってる。申し訳ない、すんませんと頭を下げて席に着いた。

そこから酒が入って、後から来た奴らも集まってきて、いい感じになってきたところで、友人の一人が私が山でパンクした話をしだした。

そらきた、始まった。

間髪入れずに酔っぱらいが言う。

「栗け!?栗のいがでパンクしたんけ!?わはは!!!」

あほか、なわけないだろ。心の中でツッコミを入れる私をよそに、みんな大笑いしてる。

「栗農家あるあるだな!わははは!」

やかましいわ、頭にいが刺したろか!

これが栗農家の宿命だ。私の車がパンクしたら、必ず誰かがこの「栗のいがでパンク」をかましてくる。一つも面白くないし、毎回「なわけあるか」って思うんだけど、みんなが言うから、もう乗っかるしかない。

「そうなんだよー、栗のいががブスっといってさー!って、そんなわけあるかい!」

って、乗っかってボケてやる。そうすると、みんなまた大笑い。なんだか、もう、お決まりの儀式みたいなもんだ。

いつかあいつらの椅子にいが置いてやる。と毎回思ってしまう。